①脳血管障害による認知症
脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、その部分の脳の働きが悪くなり、そのためにひき起こされる認知症を「脳血管障害による認知症」という。

【症状の特倒】
脳血管障害による認知症では、障害された部位によって症状は異なり、めまい、しびれ、言語障害、知的能力の低下等にはむらがある。また、記憶力
の低下が強いわりには判断力や理解力などが相対的によく保たれている場合(まだら認知症)がある。また、症状は発作によって悪くなることがあるため、日によって差が激しいことも特徴として挙げられる(図2)。

図2.脳血管障害による認知症の経過
冠元顆粒薬理解説「2-2 認知症のメカニズム」01

【原因】
脳血管障害による認知症の原因としては、脳梗塞の多発によるもの、つまり脳の血管が詰まったり破れたりするものが大部分(70~80%)を占めている。そのため、脳血管障害により脳の血流量や代謝量が減少し、その程度や範囲は認知症の程度と関係している(図3)。

図3.正常脳と脳血管障害
冠元顆粒薬理解説「2-2 認知症のメカニズム」02

②アルツハイマー病による認知症
アルツハイマー病とは、原因は不明であるが、脳内でさまざまな変化がおこり、脳の神経細胞が急激に減り、脳が病的に萎縮して(小さくなって)高度の知能低下や人格の崩壊がおこる認知症である。ゆっくりと発症し、徐々に悪化していくが(図4)、初期の段階では運動麻痘や感覚障害などの神経症状はおこらない。また、本人は「もの忘れ」というだけで、病気だという自覚がないのが特徴である。

図4.アルツハイマー病による認知症の経過
冠元顆粒薬理解説「2-2 認知症のメカニズム」03

【脳の変化】
アルツハイマー病の特徴的な脳の変化は以下が挙げられる。
(1)大脳皮質に著しい萎縮がみられる
(2)老人斑、神経原線維変化、神経細胞の脱落がみられる
(3)神経伝達物質に異常が生じている

(1)大脳皮質の著しい萎縮(3)
アルツハイマー病では、脳全体(特に側頭葉や頭頂葉)が萎縮して(小さくなって)いく。成人では通常1,400g前後ある脳の重さが、発症後10年位たつと800~9009以下に減る。正常な脳と比べてみる大脳が小さくなっていることがわかる(図5)。

図5.正常脳とアルツハイマー病の脳
冠元顆粒薬理解説「2-2 認知症のメカニズム」04

(2)老人班、神経原線維変化
アルツハイマー病の脳内では、神経細胞と神経細胞の間に老人斑(シミのようなもの)や神経細胞の中に神経原線維変化(糸くずのようなもの)がみられる。そして、老人斑や神経原線維変化の増加に伴い、神経細胞が減っていく。

(3)神経伝達物質の異常(45)
神経伝達物質の異常は、認知症の発現に深く関与しているものと考えられる。アルツハイマー病では、いろいろな神経伝達物質の減少がみられるが、特に、初期に記憶の働きに関わる神経伝達物質アセチルコリンの減少が明らかにされている。
アルツハイマー病において減少する神経伝達物質としてアセチルコリン(ACh)、ドパミン(0A)、グルタミン酸、ノルアドレナリン(NA)、セロトニン(5-HT)などが報告されている。