【精神症状における作用】
冠元穎粒の成分と各生薬の薬理作用は催眠、睡眠延長、自発運動抑制、鎮静など鎮静作用を有するものが多く含まれている(図1)(13-20)。冠元穎粒は臨床において、脳卒中の後遺症状としての精神症状(周辺症状BPSD),つまり,興奮,幻覚,妄想,不眠,うつ,不安,意欲・自発性の低下,情動失禁,攻撃行動などの周辺症状に改善作用があることが臨床で報告された。

図1.冠元穎粒の成分と各生薬の薬理作用
冠元顆粒薬理解説「3-3 冠元穎粒の薬理作用」01

【周辺症状:精神作用】
*自発運動量に対する冠元穎粒の影響
5週齢ddY系雄性マウスを用い、Open-field法で装置底面の区間を横切る回数を指標としたambulation (自発運動量)”rearing(立ち上がり運動)に対する冠元穎粒の影響を3分間測定した。Open-field法での観察は、冠元穎粒の投与前,投与後1,2および4時間に行った。冠元穎粒300mg/kg投与では自発運動量が有意に低下した(図2)。結果には示していないが、冠元穎粒は協調運動や筋力などには影響しなかった。

図2.自発運動に対する冠元穎粒の影響
冠元顆粒薬理解説「3-3 冠元穎粒の薬理作用」02

*メタンフェタンミンによる運動量の増加に対する冠元穎粒の影響
1mg/kgメタンフェタミン投与後1時間において、著明な運動量の増加が認められた。冠元穎粒300mg/kgの投与はこの運動量増加を有意に抑制した(図3)。

図3.メタンフェタミンによる運動量増加に対する冠元穎粒の影響
冠元顆粒薬理解説「3-3 冠元穎粒の薬理作用」03

*攻撃行動に対する冠元穎粒の影響
攻撃行動を評価するために、3ヶ月単独隔離飼育したWistar系雄性ラットを用いた。測定は鼻先に差し出した棒に対する反応(attack response)を以下の基準で冠元穎粒投与前,投与後30分, 1,2および4時間後に評価した

ScoreO:棒に対して無反応
Scorel:棒に対して注意をむける
Score2:棒に接近して軽く棒をかむ
Score3:激しく棒に噛みつくが持続しない
Score4:持続的に棒に噛みつき,中に引き込む

単独隔離飼育されたラットは_集団で飼育されたラットと比較して明らかな攻撃行動の促進が見られた。冠元穎粒はこの攻撃行動を抑制した(図4)。

図4.攻撃行動に対する冠元穎粒の抑制効果
冠元顆粒薬理解説「3-3 冠元穎粒の薬理作用」04

*冠元穎粒による睡眠作用の促進
チオペンタールナトリウム(60mg/kg)腹腔内投与し、正向反射消失時間を測定した。
冠元穎粒は,チオペンタールナトリウム投与1時間前に経口投与を行った。冠元穎粒は有意に睡眠作用を増強した(図5)。

図5.チオペンタールナトリウムによる睡眠時間に対する冠元穎粒の影響
冠元顆粒薬理解説「3-3 冠元穎粒の薬理作用」05

*幻覚に対する冠元穎粒の抑制作用
(R)-DOlはセロトニン5HT2A受容体アゴニストであり幻覚作用と関連すると考えられている。
DOlをマウスに投与すると首振り行動(Head-twitchresponse)を誘発し,この行動が幻覚作用に関与することが知られている。そこで、DOI(5mg/kg)を腹腔内投与し,5分後から5分間の首を振る回数を測定した。測定開始1時間前に冠元穎粒の経口投与を行った。冠元穎粒はDOlによる首振り行動を抑制した(図6)。

図6.セロトニン5HT2AアゴニストDOIのラット首振り行動に対する冠元穎粒の影響
冠元顆粒薬理解説「3-3 冠元穎粒の薬理作用」06