日本の平均寿命は2006年の世界保健機関(WHO)の報告では82歳と世界一である。
この原因としては、保険によりほとんどの国民が質の高い医療を受けられること、寿命延長に関わる遺伝子を有している可能性がある(‘)こと、バランスの良い食生活などが考えられる。しかし一方では、出生率が減少し、老人が人口全体の中で占める割合が著しく増加した高齢化社会の時代を迎えている。高齢者すべてが健康な生活を送ることができるかといえば必ずしもそうとは言えず、加齢(エイジング)が進むにつれ生活習慣病、老化現象などが増加する。このことからアンチエイジング(抗加齢)医学の導入は健康で快適な生活、つまり「生活の質(QualityofLife)」を高める上で重要である。
老化の定義には様々な表現があるが、加齢(aging)と老化(senescence)という表現がしばしば用いられている。この二つは混同しやすいが、老化は高年齢層に見られる外見的な構造および機能の衰えを意味する。しかし、免疫機能に関連する胸腺や、メラトニンを分泌する松果体退縮のように、ある特定な臓器では発育期のような早期から衰えを示すものがある。このような身体の変化は加齢(エイジング)を意味する(図1)。早期の加齢変化は中高年層に生じる生活習慣病や老化に重要な影響を及ぼすことから、アンチエイジング医学は予防医学につながると期待される(‘、2)。

図1.加齢と老化の違い
冠元顆粒薬理解説「4-1 総論」01

エイジングのメカニズムはいくつかの仮説がある(表1)。アポトーシスつまり遺伝的に細
胞死がプログラムされているという「プログラム説(programmed theory)」、細胞の合成系
や酵素系で数多くのエラーが、細胞が生存不可能な量まで蓄積されるという「エラー・カタ
ストロフィー説(error-catastrophy theory)」、「突然変異説(somaticmutationtheory)」な
どがある。このような遺伝レベルでの障害の原因として最も一般的に受け入れられている
要因が酸化ストレスである。活性酸素は反応性が高く、活性酸素種が酸化的ストレスを引
き起こした結果生じたエイジングの仮説は「酸化的ストレス仮説(oxidativestresstheory)」
である(3)。

表1.老化の仮説
冠元顆粒薬理解説「4-1 総論」02
1. TakagiK,YamadaY,GongJS,SoneT, YokotaM, TanakaM。Associationof a
  5178C–>A (Leu237Met) polymorphism in themitochondrial DNAwith a low
  prevalenceofmyocardial infarction inJapanese individuals.Atherosclerosis. 2004
  Aug;175(2):281-6
2.アンチエイジング医学-その理論と実践一編集吉川敏一診断と治療社2006年出版
3.TroenBR.Thebiologyofaging.MtSinaiJMed.2003Jan;70(1):3-22。(老化の生命科学。PaolaS.Timiras編武田政俊